Hemp Thai
ヘンプは別名「大麻」と呼ばれるマリファナと同種の自然植物です。原産は中央アジアで徐々に、東アジア、インド、ヨーロッパなどの国々へと広がりました。タイの種類はヘンプの繊維を丈夫にし最高の品質を保っています。また、ヘンプはリラックス効果があるといわれています。
11世紀のインドで最初にヘンプが発見されたとき、薬として使われていました。その後、ヨーロッパとアメリカではヘンプをマリファナ栽培に利用しました。マリファナは中毒性のある薬物で精神に幻覚や錯覚を起こすとしてヘンプの栽培は、政府によって厳しく法の下管理されています。ヘンプの繊維はその昔、とても丈夫でバクテリアを防ぎ、カビ、ダニなどをよせつけないことからミイラを包む布を作るのに使われていました。包んだものの温度を保つことができるのでミイラを保存するのに最適でした。
タイのモン族はとても長い間ヘンプと共に暮らしています。ヘンプはモン族の文化と伝統になくてはならない存在で、毎日の暮らしに様々な形でかかわっています。衣服やハンモック、ブランケットなどはモン族が使うヘンプ製品の一部です。そのほかにもモン族は年をとるとヘンプを使って特別な服を用意します。それはヘンプが死後の世界で彼らを天国へと導いてくれると信じているからです。このようにヘンプはモン族の暮らしの中で今でもとても大切なものとして存在し続けているのです。
現代では、ヘンプとマリファナの種は明らかに違う種類として識別されています。マリファナはその葉を使うために植えられますが、ヘンプはその繊維を使うために植えられます。ヘンプ繊維は粘着質で強く長く使うことが出来ます。今ヘンプは紙、布、縄、衣類などさまざまな形で使われています。ある調査ではタイの北部で生産されるヘンプが世界で一番だと報告されています。
ヘンプはモン族の生活様式の中で長い間親しまれ、日常生活と伝統行事や信仰のどちらにおいても欠かすことが出来ません。その昔、他の繊維を手に入れることが出来なかった時代にはヘンプのシーツを裁断し縫製し衣類やその他のものを作りました。いまでもなお、ヘンプ製のスカートは受け継がれています。スカートには白いヘンプが好まれ、縫製後、蜜蝋を使って装飾します。その後、ハオマ汁やグラで染色するとインディゴ色になります。最後に蜂蜜で模様をつけます。
モン族ではヘンプは深い信仰の意味があり、多くの伝統行事に使われます。たとえば、毎年、新年に行われるヘンプで橋を作り精霊と交信する儀式などがあります。この橋は一番上の扉に続いており、天から使者たちが橋を通じて空から降りてくるといわれています。ヘンプがかかわる最も大切な儀式は葬儀です。葬儀の最初のお祈りで死者の魂を先祖の下へ導くときヘンプ製の靴を履かせます。たくさんの毛虫がいる土地やとげだらけの森を、通り抜けてご先祖様のもとへたどり着くように丈夫なヘンプの靴が必要と考えているからです。また、死者の魂はトラや蛇などの凶暴な生き物に襲われると信じられ、それらをかわすためにヘンプ繊維を口の中に投げ込むのです。
最近では、マリファナ栽培の影響からヘンプの栽培は厳しく規制されています。モン族は昔のように自由にヘンプの栽培はできません。それはモン族の信仰や引き継がれた伝統をなくすことにつながります。今、私たちは、このモン族の伝統を継承することを助けています。そうすることによって何世紀にわたって引き継がれてきた伝統を守り、高い品質の素材や製品を永遠に作り続けることができるのです。
ヘンプの生産は、環境に優しいと考えられています。それはヘンプの生産によって環境によい効果をあたえているからです。それらは以下のようなものです。
●無公害:ヘンプはほとんどの土地、気候で育ちます。肥料もいりません。除草剤や農薬もほとんど必要ないため土地、空気、水への公害を削減します。それだけではなく、ヘンプはそれ自身がフィトメジエーションと呼ばれる土から毒素を取り除く作用があります。化学公害も世界の50%の殺虫剤が使われる綿生産からヘンプ生産に替えることによって大きく削減することができます。
●農業の継続:ヘンプは肥料なしで成長するだけでなく、土地表面にナイトロジェンと栄養素を再生し肥沃で健康な土壌を作ることから継続的な農業が実現します。
●土地浸食制御:ヘンプの木は長い根を持ち、土をしっかり支え侵食を制御します。
●二酸化炭素吸収:その早い成長から二酸化炭素吸収にも役立ちます。二酸化炭素を吸収し酸素を還元します。
●無公害産業:ヘンプから紙や布を生産するには木や綿から生産するときのように塩素は必要ありません。木材パルプを利用した製紙工場は3番目に大きな公害源となっています。ヘンプ利用に替えることで地球環境に計り知れない改善があるでしょう。
●エコ燃料:生物分解燃料として、化学燃料と比較してほとんど二酸化硫黄を用いることがないヘンプ燃料は二酸化炭素をおよそ80%削減することができます。それはヘンプ燃料がオゾン層を破壊することなく、地球温暖化や異常気象に影響する温室効果や酸性雨を防ぐことにつながります。ヘンプ燃料は塩より10倍少ない毒性で糖として生物分解されます。
●節水:成長に多くの水を必要としないヘンプ植物は地球が直面している水の危機を助けます。他の植物や綿の栽培地と比べてヘンプは必要な水が少なくなります。
●土地の有効活用:1エーカーで作られるヘンプ繊維は4エーカーの植林、2エーカーの綿農場と同じ量になります。ヘンプを栽培することによって土地の有効活用ができ森林破壊を防ぐことができます。
●長く使える製品:ヘンプ繊維は大変丈夫で他の製品より長く使え再利用も可能です。ヘンプ製品は、再利用、削減、再生につながり、エコ生活を支援します。
●効果的な土地活用:ヘンプは平均的な森林でおよそ4倍の収穫があります。木の成長が25年ほどかかるのに比べて、ヘンプは90日で収穫することができます。一度、森林伐採すると回復するには25年の年月が必要なのです。
●酸素の放出:ヘンプの木は多量の酸素を放出することが証明されています。